竹ヶ端運動公園野球場

(ゲスト寄稿/広島県・兄やんさん)

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まず、この球場名(竹ヶ端運動公園野球場)を見て「えっ?どこだ?」と思った人。無理もありません。この正式名称は、地元の人たちにもほとんど浸透していないからです。通称は「福山市民球場」と呼ばれており、こちらの方が馴染みが深いかもしれません。

文字通り、福山市にある野球場ですが、交通の便は良くありません。そのため、試合がある日のみ限定で、福山駅前から臨時バスが出ています。

福山駅を出たら、右に出て、横断歩道を渡ってください。バス乗り場(11番)があります。ここから、臨時バスに乗ります。

福山駅から球場までは片道370円。乗車券は、バス停の前で買うことができます。往復で買っておくと良いでしょう。時間は、15〜20分程度かかります。球場の外野席入り口に到着します。その入り口の向かって右側にあるのが、チケット売り場です。

入り口では、オリジナルグッズとともに、焼きそば(450円)やおでんにビール(500円)、お茶など球場に売ってそうな食べ物、飲み物はひととおり売っています。

外野スタンドは芝生席です。天然の芝生で、外野グランドと同じ芝生が使われています。ビニールシートが必要でしょう。福山での試合は少ないためか、結構早いうちからお客さんが集まります。早めに入場して、ビニールシートで場所をとっておくことをおすすめします。電光掲示板は整備されており、これは結構きれいで見やすいです。広島市民球場よりも狭いので、ホームランがわりとすっと入るのも特徴です。

さて、この球場で歴史に残る試合を語ることなくして、竹の端運動公園野球場を語ることはできないでしょう。1998年8月9日、広島−横浜戦。6時間13分という歴代(当時)3位の試合時間を記録したこの試合。8回裏終了時点で6−6の同点、そのまま14回まで追加点がないまま15回表を迎え、横浜が一挙8点を奪取、結果的に14−6で横浜が大勝しました。

試合展開はともかく、この試合が終わったときには既に日付が変わっていました。気になるのは、最後まで帰らなかったたくさんの観客の皆さん。ただでさえ交通の便が悪いこの球場、たぶんバスが出たとは思うのですが、皆さんどうやって帰ったんでしょうか…興味深いところです。

さてここからは、2000年3月5日の広島−ヤクルト・オープン戦の観戦記です。福山駅からバスに乗って、一路、球場へ。球場に着くとすぐにチケットを買い、外野席に向かいました。

福地選手のテーマ曲が真っ先に聞こえてきました。いつものように、私設応援団の人がトランペット演奏の練習をしていたようです。他にも新井選手のテーマ曲(今年からの新曲)も聞こえました。この二人のテーマ曲を重点的に練習していたようです。

それにしても、懐かしい響き。このトランペットの音を聞くと、「今年も、プロ野球の季節がはじまったな〜」と実感します。ヤクルト側のトランペットの姿は、今日はレフトスタンドにはありませんでした。

ところで、この2選手(新井、福地)、2月26日(ロッテ戦)、27日(巨人戦)にともに出場していましたが、新井は右翼・左翼・三塁・一塁の4ポジション、福地は右翼・左翼・二塁の3ポジションをこの2試合のうちに守っていました。その起用法が、期待の高さをうかがわせます。結果を残せば、公式戦で万が一、主力選手の誰が抜けても、真っ先にこの2人に出番が与えられるでしょう。この2人のテーマ曲が重点的に練習されていたのも、その期待の高さのあらわれかもしれません。

観客は思ったよりたくさん入ってて驚きました。公式発表では、7000人だったそうです。内野席こそ空席がちらほらあったものの、外野はライトもレフトもほとんど観客で埋まっていました。

筆者は12時ごろ入場したのですが、座る場所を探すのに往生したほどです。ライトのポール際の、わずかなスペースを見つけてビニールシートをひき、場所を確保するのがやっとでした。外野スタンドの天然の芝生は、枯れていた上に前日の雨が乾いたばかりで、ますますカラカラの状態でした。

外野グランドも同じ芝生で、外野守備練習の様子を見ていても、打球がバウンドしないのがわかりました。試合中にもその影響が出て外野守備がしにくそうでしたが、それを除けば、プレーに支障があるほどではなかったようです。

前田選手、町田選手が、ライトの守備練習で打球を軽快に処理していました。ライトスタンドからの「前田〜」「前田さ〜ん」のコールは、いつもと変わらない風景でした。

さて、スタメン発表。

(ヤ)8飯田-7真中-9佐藤-3ペタジーニ-2古田-4ロブロ-5岩村-6宮本-DH高橋智
(広)8緒方-5野村-9前田-DH金本-3ボール-7新井-4ディアス-2田村-6東出

両チームとも、ほぼベストメンバーでした。ヤクルトは、智のところ(9番)に投手がくれば、公式戦スタメンはできあがりでしょう。広島は、キャッチャーを西山にして、レフトを金本が守れば、あとは東出をどの打順に入れるか、これが決まれば固まってくるでしょう。

13時試合開始。ミンチー、山部、ともに立ちあがりは良く凡打の山。試合は速やかに展開しました。

最初の見せ場は2回裏にやってきました。まず、金本の打球が飯田のところへ。アウトか? と一瞬思いましたが、センター前へショートバウンドした瞬間に飯田がキャッチしたため、結果的にはセーフ、金本は二塁まで走りました。心配していた芝生の影響がここで出てしまったようでした。

ボールが失策出塁、新井が四球出塁で一気に無死満塁。ディアスが初球をライト前に運び、2点先制。さらに追加点のチャンスか、と思いましたが、そのあとが悪かった。田村が送りバント失敗、東出がセーフティバント失敗。ともに自分の役割が果たせませんでした。

田村はこれに限らず、フルイニング出たにもかかわらず今日の打席では、チャンスを潰すばかりでいいところなし、何で田村が途中交代されないの!? とさえ思いました。この回は、もっと点がとれたはずなのに…。

3回表は先頭打者の宮本が魅せてくれました。右中間へ打球を運ぶと、あとはひたすら走る走る。後ろをまったく振り返らずに、とにかくひたすら走っていました。これだけ走ってアウトだったら仕方ない。三塁上でヘッドスライディングして三塁打が成立しました。

他の打者だったら、状況をうかがいながら走るところなので、せいぜい二塁でストップするのが精一杯だったでしょう。決して脚を期待されているわけではないのに。そのがむしゃらさ、ひとつでも先の塁を行く執念が、智のタイムリーヒット、1点追加に繋がったといえるでしょう。

3回裏。緒方がレフトへ、野村がライトへ連続安打、ここで野村に代わって福地が代走に。前田が四球出塁、一気に無死満塁。ここで前田に代わって町田が代走に。金本がライト線へ運び二塁打、足が速い緒方、福地のホームインで2点を追加しました。

さらにボールが四球出塁。再び満塁のあと、ディアスが犠牲フライでさらに1点追加しました。ここでホームに走ったのは、代走起用された町田。大量点のチャンスをうまく生かしたシーンでした。

試合後半は、ホームラン合戦でした。5回表、ロブロの打球はライトへ。ライトを守っていた町田が振り返って空を仰いでいたので、それで場外ホームランだったんだな、とわかりました(筆者は見れなかった)。

6回裏には緒方、福地がともにレフトスタンドへホームラン、7回裏には新井がレフト場外へホームラン。

ちなみに、この球場は広島市民球場よりも狭い。いずれのホームランも、狭い球場ならではの、「え?入ったの?」「また入ったの?」と思わせるようなあっさりしたホームランでした。

試合中、ベンチそばのファールグラウンドでは、試合に出てない選手のトレーニング、これから途中出場する選手のアップ、お役御免でさがった選手のクールダウンがおこなわれていました。

前田のクールダウン姿に、子どもたちの視線が集まります。ベンチそばの内野席のファンに、選手がサインをあげたりするシーンも。

15時36分。宮本のフライを町田がキャッチして試合終了。その瞬間…外野の観客、数十名がグランドへ飛び出し、内野グランドへ駆けぬけていきました。カープファンの興奮が絶頂に達した瞬間でした(すみやかに戻ってきましたが)。

試合終了時点でのラインナップは、

(ヤ)9稲葉-8真中-7佐藤-3度会-4本郷-2小野-5岩村-6宮本-DH土橋
(広)8浅井-4福地-9町田-DH山田-7伊与田-3新井-5佐藤-2田村-6東出

スタメンと比較すると、入れ替わりの多さが伺われます。まさに、オープン戦ならではの選手起用ですね。ヤクルトの外野は稲葉が入ってから守備位置もごっそり変わってるし、カープは、福地が2ポジション(左翼、二塁)、新井が3ポジション(左翼、三塁、一塁)と、他の選手との兼ね合いでいろんなポジションをこなしました。これらの起用法は、公式戦でも見られることでしょう。

試合結果……ヤクルト2−8広島

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