いわみスタジアム

MAP

(ゲスト寄稿/広島県・いの一番さん)

2006年8月6日、筆者はウエスタンリーグの広島−ソフトバンクを観戦するため広島市の自宅を出発した。今日の目的地は島根県邑南町(おおなんちょう)のいわみスタジアム、筆者にとって6年ぶり3回目の訪問である。

自宅近くのインターチェンジから高速道路に入り北へ向かって走る。途中まで片側二車線の道路は浜田自動車道に入ると一車線になってしまうが、交通量は少なく快適なドライブが楽しめる。

さほどの時間もかからないうちに車は県境にさしかかり、長いトンネルを抜けるとすぐに瑞穂インターがある。ここが球場への最寄インターだ。そしてここまで来れば、まず道に迷うことはない。「石見(矢上)方面」「香木の森方面」という案内看板に沿っていけばいいのである。

球場へ通じる道路は「雲海ロード」という愛称で呼ばれ、高速道路の開通と同時期に造られたと思われる比較的新しいものだ。沿道に人家は全くなく、熊や猪が出てきてもおかしくない雰囲気である。そんな中を走ること約10分、トンネルを抜けると視界が開け、やがて右手に球場が姿を現した。

到着は11時10分で試合開始までは1時間20分ほどあるが、既に道路沿いの駐車場は満車となっており、係員の誘導に従って一塁側スタンド裏の芝生広場へと進む。こちらもかなりの台数が駐車しており、なかなか盛況のようだ。

ここで地名と球場名について説明しておくと、邑南町は2004年10月に3つの町村の合併により誕生した町で、邑智郡の南部に位置していることからこの名前となった。そして球場は3町村のうち旧石見町の施設だったもので、合併後もその名称が使用されているのである。

もっとも石見町といっても旧石見国の中心地だったわけではなく、全国によくある小さな自治体が勝手に旧国名を名乗った類のものである。そしてもう一つつけ加えておくと、巨人の酒井純也投手はこの町が生んだ初のプロ野球選手だそうだ。

話を元に戻し、車を降りると空は快晴、夏の日差しが照りつけ山の中とはいえとても暑い。気温は間違いなく30度を超えている。過去2回の観戦ではいずれも雨にたたられ散々な目に遭ったが、今回はどうやらその心配はなさそうだ。

入場券売場のある三塁側に行くと、そこにはテントがいくつも並び、やきそばや茶などの飲食類、応援グッズ、それに地元の特産品などを売っていた。


売店

1500円のネット裏席券を買って中へ入ると既に半分近くの席が埋まっていたが、運よくキャッチャー真後ろの席を確保することができ腰を下ろす。グラウンドではソフトバンクの選手達が守備練習をしているところであった。


入場券

それではここで球場の概要を紹介しよう。

大きさ:両翼98m、センター122m
グラウンド:内野土、外野天然芝
スタンド:ネット裏ベンチ席、その他芝生席
スコアボード:得点は磁気反転式、打順表は手書式
照明塔:6基


スコアボード

この球場、グラウンドは公認規格を満たしており、広さは申し分ない。昔ながらのサイズの球場しなかい山陰地方では唯一の存在であり、旧石見町という小さな自治体がよく建設したと思う。


ネット裏スタンド


外野席

外野の定位置あたりの芝生が結構はげているのが気になるところだが、一方で両翼のポールは6年前には短く白い棒だったものが長くネットの付いた黄色いものに取り替えられており、維持管理は何とか行われているようだ。


一塁側から


ライト側から

また球場正面には1996年10月6日に名球会が野球教室を行った記念として、来場した12名の手形のレリーフが飾られている。かなりギャラを払ったのだろうが、名球会は呼ばれればこんな山の中でもやって来るのだ。


名球会来場記念

ただ、この球場はトイレに問題がある。観客は場外に設置された数基の仮設トイレを使用するしかない。観客数に比して数が少なすぎるし、真夏なので入った瞬間に気分が悪くなる。滅多に大きな行事が開催されない球場とはいえ、もう少しなんとかしてもらいたいものだ。

さて、暑い中を待つこと数十分、試合開始の15分くらい前になって、上空にヘリコプターが飛んできた。最初はただ単に付近を飛行しているだけで試合とは関係ないと思っていたのだが、このヘリコプター、だんだんと高度を下げてくるではないか。

「何だ、これは」と思っていると、場内放送で「ヘリコプターから始球式用のボールを投下します」のアナウンス、これには場内が大きくどよめいた。ウエスタンでは過剰演出という気もするが、6年ぶりの開催という地元の意気込みの表われだろうか。


ヘリコプター

ヘリコプターは無事にダイヤモンド内へボールを投下して空の彼方へ去って行った。ちなみにこのヘリコプターは毎日新聞社所有のものであった。これは同社が町などとともにこの試合の主催者であったことが理由のようである。

この後、地方球場恒例の両チーム監督への花束贈呈、町長の始球式があり、12時30分、広島はフェリシアーノ、ソフトバンクはカラスコの両先発投手で試合が開始された。


始球式

前半は投手戦で両チームとも1回から5回まで無得点、安打も1本ずつで大した見せ場もなく淡々と進んだ。近くにいたファンが「ヒットが出んねえ」とつまらなさそうにつぶやく。しかし、6回に両チームとも投手が交代してから試合が動き、まず6回表にソフトバンクが広島のエラーに乗じて1点を先制した。遠方からやってきたソフトバンクの数人の応援団が喜んでいる。

しかし、広島も7回裏にソフトバンクの西山を攻め、一死三塁のチャンスから3連打で一気に3−1と逆転、今度は大多数を占める広島ファンが盛り上がる。ソフトバンクは9回に粘りを見せ1点を返したが反撃もここまで、結局3−2で広島が勝利した。試合時間は2時間55分だった。

試合終了後、筆者は球場近くの町営の温泉に行ってみた。試合中はほとんど雲が出ることはなく直射日光を浴びてとても暑かったので、風呂に入って帰ろうかと思ったからなのだが、そこには「広島とソフトバンクの選手が使用するため16時から17時30分まで貸し切りになります」との張り紙があった。そのため入浴はできず、汗まみれのまま帰宅することになってしまい、ちょっと残念であった。

なお、文中に書いたように、邑南町での試合は6年ぶりの開催だったが、この間島根県内でプロ野球の試合は全く開催されておらず、実はこの試合は同県では21世紀初の開催だったということになる。1軍公式戦開催は施設の関係でなかなか難しいようであるけれども、2軍戦なら可能な球場はいくつかあるので、ファンのためにも各地での開催を検討してもらいたいものだと思う。

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