上下町運動公園野球場

(ゲスト寄稿/広島県・いの一番さん)

上下町は広島県東部の山あいにある人口約6千人の町である。江戸時代天領だった名残りで古い町並みが残っていることで知られているが、鉄道ファンの人には福塩線の走る町といった方が通りがよいかもしれない。

野球ファンにはあまりなじみのない町だが、実は2002年から西武ライオンズの指揮を執る伊原春樹監督はこの町の出身で、多少は野球と縁のあるところでもある。この町に2001年の夏野球場が完成し、記念としてウエスタンリーグの広島−近鉄の試合が行われた。ここではその時の模様や球場について紹介したい。

2001年8月26日(日)、筆者は朝9時に広島市の自宅を出発し上下町に向かった。天気は曇りで時折雨が降るあいにくの空模様、おまけに午後の降水確率は50%であったが、大雨にさえならなければ暑い夏にはこのくらいがよいかもしれないと思いつつ車を走らせる。

高速道路を河内ICで降り、国道432号線を北上、10時50分に球場の駐車場に到着した。町役場や駅のある中心部から北西に約1kmのところである。実は事前に町役場から地図を入手していたのでスムーズに行くことができたが、町内の主要道路には球場への誘導案内が全く見当たらなかった。今後も試合を行うことがあれば、これは改善が必要だろう。

駐車場に車を停め、近くの受付に向かう。そこでわかったのだが、二軍戦の地方試合にしては珍しくこの試合は無料であった。完成記念ということもあるのだろうが大サービスである。チケットの代わりに「祝 上下町運動公園落成」と書かれたウチワをもらう。暑い夏だからこれであおげということだろうか。そういえば空の雲は少なくなり日が射し始めている。天気予報は当たらなかったようだ。

球場は山の中腹を切り開いて造られており、坂道を数分ほど登った。到着すると試合まで1時間ほどあるというのに既にたくさんの観客がスタンドに入っていた。地元商工会の人がビールを売っており、早くも出来上がりかけている人もいる。グラウンドは緑の芝が鮮やかでいかにも出来たての球場らしい。ここで球場の概要を紹介しておこう。

グラウンド:両翼92m、センター120m、内野土、外野天然芝、ラバーフェンス付き
スタンド:バックネット裏はプラスチック製イス、その他芝生席、2000人くらい収容できそう
スコアボード:得点、カウント及び記録のみ(打順表なし)
照明塔:6基

ネット裏から 三塁側ベンチ上から
   
ライト側から レフト側から

筆者はとりあえずネット裏に座った。グラウンドでは両チームの選手が練習していたのだが、見るとホームの広島が三塁側であった。由宇でもそうなので広島の二軍はホームゲームの時は三塁側を使うのかと思ったが、石見スタジアム(島根県)の時は一塁側だったことを思い出す。結局何故三塁側なのかはよくわからなかった。

やがて試合開始10分前となり、グラウンドでは記念のセレモニーが始まった。両軍監督へ花束が贈呈され、上下町長が「広島県人としてはカープに勝ってほしいのですが、私は学生時代近鉄でアルバイトをしてお世話になったので近鉄にも頑張ってもらいたい」とうまく両方を立てる挨拶をして、自ら始球式の投球を行ってプレーボール。広島の先発は期待の若手河内ということもあり、大きな拍手が送られる。


始球式

そして1回表、近鉄の攻撃が始まったのだが、しばらくして筆者は妙なことに気付いた。スコアボードのカウント表示がストライクの時青のランプ、ボールの時黄色のランプがつくのだ。最初は係員が操作を間違えているのかと思ったが、よく見るとスコアボードはこうなっていた。

 
 

後で調べたところ、このような表示の球場も少数ながら存在するらしいのだが、S−、B−に慣れているとどうも落ち着かない。結局最後まで違和感があるままだった。


見えにくいですがスコアボードのランプ

さて、試合の方は1回裏に広島が1点を先制したが、4回表に近鉄が2点を入れて逆転、しかしその裏広島が2点を入れて再逆転という目まぐるしい展開を見せながら進んでいく。ホームランも飛び出したりして観客は大喜びだ。

そんな中、ふとバックスクリーンに目をやると、また妙なことに気付いた。バックスクリーンの上には旗を掲揚するポールが3本立っているのだが向かって左側に広島の球団旗、中央に日の丸と上下町旗、そして右側にはウエスタンリーグの連盟旗が掲揚されていた。

それでは近鉄の球団旗はどうしたのか? 場内を見渡したがどこにもない。何と失礼なことに近鉄の球団旗は掲揚されていなかったのである。筆者は広島ファンであるが、これには近鉄に同情した。広島球団と上下町のどちらに責任があるのか知らないが、こんなことではいけません。


問題の旗

結局試合は自分達の旗がないことに気付き戦意喪失した(ウソです)近鉄が7回裏に広島に4点を取られ最終的に7−4で広島の勝ち。観客のほとんどが当然ながら広島ファンであり、皆満足した表情で帰途についていた。

筆者も帰宅することにしたのだが、その前に上下町の西隣にある甲奴町(こうぬちょう)に寄ってみることにした。実はこちらにも「カーター記念野球場」という球場があり機会があれば行ってみようと思っていたのである。

目次へ

inserted by FC2 system