甲奴町カーター記念野球場

(ゲスト寄稿/広島県・いの一番さん)

 

上下町運動公園野球場で広島−近鉄の観戦を終えた筆者は西隣の甲奴町(こうぬちょう)に向かった。実はこちらにも「カーター記念野球場」という球場があり、機会があれば寄ってみようと思っていたのである。

事前に地図で調べたところ、2つの球場の間は直線距離で約3kmしか離れていない。事実、西に車を走らせると10分もしないうちに到着してしまった。主要県道から少し山あいに入ったところにあり、上下と同じく山を切り開いて造られた球場である。

さて、カーターというのは人名であるが、人名を冠した球場で有名なのは北海道旭川市のスタルヒン球場だろう。また熊本県人吉市には川上哲治記念球場というのもあるそうだ。

一方こちらのカーター氏、野球とは全く関係のない人物であるが、その知名度や国際性では先の2人ともその足元にも及ばない。なにしろカーターというのは元アメリカ大統領ジミー・カーター氏のことだからだ。

元アメリカ大統領と広島県の小さな町がどうして関係あるのか? というのは誰しも疑問に思うところであるが、町役場のHPなどによると次のような理由からだそうだ。

第2次世界大戦中、町内の正願寺にあった鐘が軍に供出された。その鐘は兵器の材料には使われずどういう訳か日本からイギリスへ、さらにアメリカへと渡った。そして何故かアトランタ市のカーターセンターへと渡り「ヒロシマの鐘」として保存、展示されるようになった。それが縁となり1990年カーター氏が甲奴町を訪問、以来交流が続いている。

このため現在甲奴町が行っている施策の柱の一つは"カーター"と言ってもいい状況である。図書館や会議室のある生涯学習センターは「ジミー・カーターシビックセンター」と名付けられ、中心部の商店街は「カーター商店街」になった。さらに町内の中学生をアメリカに行かせたり、アメリカでカーター氏の記念行事があれば町長が招待されるといった具合。この町はまさに"カーターの町"なのだ。

ではそのようなビックネームを冠した肝心の球場がどんなものかというと、これがアメリカ的な雰囲気を全く感じさせない日本的なローカル球場で、概要は次のとおりである。

完成年:1992年
グラウンド:両翼91m、センター120m、内野土、外野天然芝、ラバーフェンス付き
スタンド:バックネット裏にコンクリート製の階段があるのみ
スコアボード:得点、カウント及び記録(打順表なし)
照明塔:6基

レフト側から 左中間から
   
ネット裏の観客席 バックスクリーン

グラウンドの広さは上下とほぼ同じだが、全体的に設備が簡素であるため、ここでプロ野球の二軍戦を行うのは無理である。しかし硬式野球を行うことは可能で、高校野球秋季大会の予選などで使用されている。またお盆の時期には町外から帰省してきた人と町内の人が一緒になって野球大会を行うのも恒例行事になっているようだ。

ところで、筆者は球場の周りをぐるりと一周してみたのだが、右中間のフェンス部分に興味ある物件を見つけた。この部分は場内に物を搬入するためフェンスが扉のようになっていて開閉できるのであるが、扉を支える柱が金網の上に2本ニョキッと突き出しているのである。

果たしてここに打球が当たってグラウンド内に跳ね返ったらどうなるのだろうか。ホームランかそれともプレー続行か。グラウンドルールがどうなっているのかわからないが、際どい所に当たったらモメそうな感じである。


問題の扉

カーター氏はいくつもの国際的な問題解決に当たってきた人であるが、もしこの部分に打球が当たったらどんな解決法を示してくれるのだろうか、ふとそんな事を考えた。

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