湖東スタジアム
(ゲスト寄稿/広島県・いの一番さん)
滋賀県はプロ野球の試合と縁がない県だ。一軍公式戦は1956年を最後に約半世紀開催されていないし、二軍戦やオープン戦が開催されることも少ない。開催可能な球場がないわけではなく、交通の便も良い県だけになんとも不思議なことである。
この滋賀県で2005年、珍しくプロ野球の試合が開催された。カードはウエスタンリーグの阪神タイガース−サーパス神戸、場所は東近江市の湖東スタジアムである。希少価値のある試合を見るため、筆者は現地に行ってみることにした。
2005年8月20日(土)7時31分、筆者は広島駅を出発した。今日の目的地の湖東スタジアムまではこれから4つの交通機関を乗り継がないといけない。
まずは新幹線で京都まで乗車、そこからJR東海道本線(琵琶湖線)に乗り換え近江八幡へ。そこからさらに近江鉄道に乗り換え、10時20分過ぎに八日市駅に到着した。八日市駅は東近江市の代表駅だが、球場は駅から離れた場所にあり、ここからは湖国バス(僧坊方面行き)に乗車することになる。
八日市駅
ちなみに湖国バスは近江鉄道の系列会社で、近江鉄道といえば西武鉄道グループ、というわけでバスの前面には西武ライオンズのペットマークが描かれている。
湖国バス
10時35分、バスは駅前を発車した。この路線は便数が少なく、これを逃すと次のバスでは試合開始に間に合わないという貴重な便だ。駅から球場までは最短経路で行けば数キロの距離なのだが、このバスはあちこちの集落に立ち寄りながら大回りをして走るので20分ほどかかる。おまけにこの日は道路工事の影響で途中で渋滞に巻き込まれ、最寄りのバス停である湖東支所前に着いたのは15分遅れの11時10分だった。
ここで少し説明しておくと、東近江市は2005年2月に5つの市町が合併して誕生した新しい市である。湖東スタジアムはこの5市町のうちの一つ、旧湖東町が造った施設なのでこの名前になっているのだ。今回の試合は合併記念事業の一環であり、この球場でウエスタンの試合が行われるのは1995年以来10年ぶりだそうである。
バスを降りて少し歩くと、球場のある「ひばり公園」の正門前に到着する。試合開始まで1時間以上あるが、車での来場者が次々やって来て係員は誘導で忙しそうにしている。
ひばり公園正門
ひばり公園は球場の他、多目的グラウンド、屋内体育施設の「湖東ドーム」、テニスコートなどがある総合運動公園で、名称の「ひばり」は旧湖東町の鳥がひばりだったことによるものだ。たくさんの樹木が植えられている園内をしばらく歩くと球場の正面入口に到着。近くには弁当や応援グッズの売店が並んでいる。
球場前の売店
入口の右側には入場券売場が設けられていたが、筆者はあらかじめ市役所に頼んで前売券を購入していたのでそのまま入場する。スタンドの詳細については後述するが、この日の料金体系は次のようになっていた。
座 席 | 前売券 | 当日券 |
メインスタンド(オレンジシート) | 1500円 | 2000円 |
メインスタンド(ブルーシート) | 1000円 | 1500円 |
内野芝生席 | 300円 | 500円 |
外野芝生席 | − | 300円 |
中へ入ると阪神の選手が守備練習を行っているところであった。空は晴天、グラウンドには夏の日差しが照りつけてとても暑い。しかし、筆者の座るオレンジシートにはありがたいことに屋根がついている。これで暑さはしのげそうだ。
ネット裏スタンド
市役所から送ってもらった入場券は前から4列目でキャッチャーのほぼ真後ろという特等席だ。筆者は「できれば前より後ろの方がいい」と希望しただけだったのだが、遠方からの客ということで配慮してもらったのだろうか。
ここで球場の概要を紹介すると、まず球場の完成は1991年。グラウンドは両翼98m、中堅122mで内野が土、外野が天然芝である。ブルペンは一、三塁側のファウルグラウンドにそれぞれ2人分が投球できるスペースがある。
次にスタンドは合計3500人の収容能力がある。メインスタンドは5列しかないものの個別席で、そのうちネット裏のオレンジシートは背もたれつきで、前述のとおり屋根までついている。また、バリアフリー化にも対応していて、身障者用のトイレや観戦スペースが設けられており、もちろん場外からスタンド内へのスロープもある。その他の一般内野席と外野席は芝生席だ。
ライトスタンド
この他スコアボードは磁気反転式だが指名打者制には非対応、おまけにメンバー表では4文字以上がうまく表示できず、サーパスとかサイモンといった文字が妙に小さくなっているのがおかしい。また、照明塔は6基設置されている。
やがて、試合開始の12時30分が近づき、グラウンドでは地方球場恒例のセレモニーが始まった。まず、東近江市の助役と体育協会会長のあいさつがあり、続いて滋賀県出身の桜井広大(阪神)、松村豊司(サーパス)の両選手に花束が贈呈された。そして地元の小学生が始球式を行い、試合開始である。
始球式
この時点でスタンドを見渡すと、メインスタンドでは8割程度の入りだが、内外野の一般席にはそんなにたくさんの観客がいるという感じではない。後で市役所に聞いたことろ、観衆は約1000人だったそうである。
そしてファンの構成を見ると、サーパスファンは三塁側スタンドとレフトスタンドにほんの少しいるだけで後は皆阪神ファンである。おそらく95%以上を占めているのではないだろうか。サーパスファンの声援はパラパラとした拍手が聞こえて来る程度である。
さて、試合は阪神が橋本、サーパスが近藤の両投手で始まった。先制したのはサーパスで3回表に嶋村の中前打で1点を先制、5回表にも追加点を挙げ2-0とリードした。しかし阪神は5回裏、相手のミスにつけ込み同点とした後、前田がレフトオーバーの3ランホームランを放ち5-2と逆転、近藤はこれでKOされてしまい阪神ファンは大喜びである。
6回は両チームとも0点、そして7回からは阪神はマウンドに辻本を送ってきた。ドラフト制導入以降最年少の入団者ということで話題になった選手である。
その辻本、7回はいい当たりをされながらも何とか0点でしのいだが、8回につかまった。安打と四死球でいきなり無死満塁のピンチを作り、五島に走者一掃の二塁打を浴びて同点にされてしまったのだ。阪神はここで辻本を降ろし伊代野を登板させたが、伊代野も乱調で安打を浴び3点の追加点を許す始末、この回6点が入り8-5とサーパスが逆転に成功した。
試合はこの後、両チームとも0点のまま進み、結局8-5でサーパスが勝利、勝ち越す直前の7回裏に投げたご当地選手の松村が勝利投手となり、話題の辻本は敗戦投手になってしまった。試合時間は3時間15分だった。
帰りはちょうど最寄りのバス停を16時05分に通るバスがあったのでそれに乗車、往路と反対のルートをたどり、広島駅に帰って来たのは19時40分だった。
SK |
0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 6 | 0 | 8 | |
T | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
勝:松村 12試合1勝2敗
S:阿部健 22試合2勝3敗1S
負:辻本 3試合1敗
本:前田1号(近藤)