くろしおスタジアム

(ゲスト寄稿/広島県・いの一番さん)

MAP

2004年8月7日(土)10時31分、筆者は和歌山県新宮市にあるJR紀勢本線の紀伊佐野駅に降り立った。今日の目的地は「くろしおスタジアム」、ここでウエスタンリーグのダイエー−広島が行われるのである。球場の最寄り駅である紀伊佐野駅は新宮駅から串本方面へ2つ目のところにある無人駅だ。天気は快晴、気温は既に30℃を超えていてとても暑い。もっとも午後からは曇ってきて雨が降るかもしれないという予報である。

駅舎のすぐ前には球場への案内看板が立てられており、それに従って右側(串本方面)へ線路沿いの道を歩く。しばらく行くと少し大きな道に出て、案内の係員が立っており、その先の川沿いの道には「ウエスタンリーグ」と書かれた幟が林立していた。向こうにはもう目指す球場が見える。事前の調査では場所がよくわからず、結構歩く必要があるのかと思っていたが、案外近いので安心する。


林立する幟

幟に沿って歩くとほどなく球場に到着、駅からの所要時間は約10分であった。なお、参考までに書いておくと、紀伊佐野駅は普通列車しか停まらず、しかも本数が少ないので事前に時刻を確認しておく必要がある。また、近くの国道には新宮駅と串本駅を結ぶバスも走っているので、時間帯によってはこちらも利用可能である。

一塁側スタンドの近くにある入口には受付のテントがあり、入場整理券を見せると係員が試合のパンフレットと記念のTシャツ(先着300名のみ)をくれた。この試合は無料で観戦できるのだが、市役所に問い合わせたところ整理券が必要とのことだったので、送ってもらっていたのである。


入場整理券

そして受付の隣には飲み物を売るテントがあり、ペットボトルのお茶やジュースがあった。しかし、食べ物はどこにも売っていない。筆者は昼食を用意してきていたのでよかったが、「球場に行けば何かある」と思っていた人は困ったのではないだろうか。ただ、情報によれば、その後球場近くの国道沿いに大規模なショッピングセンターが開店したそうなので、今後球場に行かれる方はそこで食べ物を調達すればよいのではないかと思う。

パンフレットを見ると、この試合は8月6日から8日まで開催される「ベースボールフェスティバルin和歌山」(全日本野球会議普及振興委員会主催)という行事の一環であることがわかる。内容は少年野球からウエスタンリーグまで盛りだくさんなのであるが、新宮での行事はこの試合だけで、後はすべて和歌山市の紀三井寺球場が会場である。

実はこの日の試合は当初紀三井寺での開催が予定されていたのだが、シーズンが始まった後で突然新宮に変更された経緯がある。後で調べたところによると、地元が強力に誘致活動をしたとのことで、この試合のために得点板しかなかったスコアボードに打順表を設置したそうだ。

ところで、筆者はスタンドならどこでも入れるのだろうと思い、まずネット裏席に入ろうとしたところ、係員に「ここは関係者以外入れません」と言われてしまった。仕方がないので、広島側の三塁側スタンドに行き腰を降ろす。ここからネット裏を見ると少年野球チームの選手達がたくさん座っている。どうやら彼らが“関係者”のようだ。

ここで、球場の概要を紹介すると、完成したのは2003年で総工費は13億4千万円、グラウンドは両翼98m、センター122mで内野は土、外野は天然芝である。

センター側を望む ライト側を望む
   
ライト側から 左中間側から
   
レフト側から
   
一塁側から 三塁側から

次にスタンドはネット裏と一塁側、三塁側にあるが、地方球場にはつきものの芝生席の外野スタンドは存在しない。収容人員はわずか1414人である。写真をご覧になればわかるように、とにかく小さなスタンドで、地元産の杉を使用した木製のベンチ席がわずかに5列あるだけで、最上段に座ってもネットが視界に入ってグラウンドが見えにくい。バックネットも支柱がたくさんあり、観客のことを考えているとは言いがたい球場だ。

一塁側スタンド 三塁側スタンド

この他左中間にあるスコアボードは、得点が電光式で打順表は手書き式、照明設備はない。なお、外野フェンスの後ろは通路になっており、その向こうは山である。球場造成のために削られた山肌が何とも痛々しい姿だ。


スコアボード

グラウンドでは広島の選手が守備練習をしていたところで、それを見ながら昼食をとり、場内をひととおり見て回ることにする。まず、外野側から写真を撮ろうと思い、レフト側に行くと、ポールの10mくらい先からは関係者以外立入禁止になっている。

仕方がないので、ライト側からの写真を撮るためネット裏を回って一塁側スタンドの外側を歩いていると、前からどこかで見たことのある人がやって来た。何とダラ球会員のHさんではないか。「こんにちは」と声を掛けると向こうも気付き、一緒に観戦することになった。

聞けば、関東在住のHさん、一昨日は広島で広島−阪神を観戦し、昨日は新宮まで移動して一泊、明日は紀三井寺で観戦だそうで、かなりの強行日程である。また、「整理券は持っていたんですか」と聞いたところ、何も持っていなかったが入れてくれたとのことで、結果論だが事前に券を頼む必要はなかったようだ。

三塁側スタンドに戻り、試合開始を待つ。しかしとにかく暑い。ウグイス嬢は「熱中症にならないよう十分注意してください」と繰り返しアナウンスしている。このような環境でプレーしなければならない選手は気の毒である。

炎天下の中を待つこと1時間、やっと両チームの先発メンバーが発表される。先発投手はダイエーが飯島、広島が永川だ。そして試合開始時刻の12時が近づくと新宮市長がグラウンドに姿を現し、始球式を行って試合が開始された。

この時点でスタンドの入りを見ると、ネット裏はほぼ満席、一、三塁側とも7〜8割の入りとなっていた。ダイエーや広島のファンが多いとはいえない場所で、しかもご当地選手もいないのだから、これは上出来の部類だろう。

さて、試合の方は、1回裏にダイエーが大野のヒットで1点を先制すると、2回表に広島は明石のエラーで1点をもらい、同点となった。そしてその後は5回裏まで両チーム無得点のまま進んでいったのだが、このあたりから筆者は二つのことが気になってきた。

一つ目は試合進行が非常に遅いことである。得点は1−1なのに5回終了時で既に13時50分、これではとても15時頃には終わらない。実は筆者は紀伊佐野駅発15時35分の列車に乗る予定にしていた。それだと広島には21時39分に着く。しかし、それを逃すと次は17時21分まで待たなければならず、広島着は23時56分になってしまうのだ。

このようになってしまったのは、両投手の投球内容に原因がある。飯島、永川とも球数が多く、特に永川は5回までで80球を超えているのだ。もう少しテンポよく投げてくれ、と言いたくなってしまう。

そして二つ目は天候である。あれほど晴れていた空はいつの間にか一面雲に覆われて、少ししのぎやすくなってきた。ただ、遠くの山の方を見ると雨が降っているようで、しかもそれが少しずつこちらに近づいてきているのだ。何とか試合中は降らないでほしいと祈り始めたのだが…

話を試合に戻すと、6回表に広島は木村一のヒットで1点を勝ち越し、8回表には押し出しの四球などで3点を追加、差を4点に広げた。そしてこの頃からついに雨が降り始め、9回裏の開始時には本格的な降り方になってきた。こうなると試合を早く終わらせたいのは人情で、ダイエーの攻撃は三者凡退であっさり終了、広島が5−1で勝利した。

試合終了時刻は15時32分、もう予定の列車には間に合わない。しかし、球場に雨宿りできるような場所はなく、おまけに遠くの方で雷も鳴り始めたので、Hさんと2人で駅へ向かって走る。筆者は日傘を持っていたのでまだよかったものの、何も持っていないHさんはずぶ濡れで、ほうほうの体で駅へたどり着く。Hさんはこの日も新宮に泊まるとのことだったが、そちらへの列車もしばらくないので、約1時間半、駅の待合室で野球談義をして時間を潰したのであった。

17時21分、やっと来た列車に乗り紀伊勝浦まで行ったが、そこからがまた大変だった。雷雨の影響は相当広範囲に及んでいたようで、特急は30分も遅れて到着、さらに新大阪へ着けば新幹線まで遅れており、広島へ帰ってきたのは日付の変わった翌日の0時20分、何と疲れた観戦旅行であった。

C 010001030 5
H 100000000 1

勝:永川 7試合1勝2敗  負:飯島 21試合1勝1敗

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