春日スタジアム

(ゲスト寄稿/京都府・ふさ千明さん)

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ある日ウェスタンの日程を見ていたら「SU−H 丹波」という記述を見つけた。そこで気になって調べてみたところ兵庫県丹波市に球場があり、どうやら毎年のようにここでウエスタンの公式戦をやっているらしい。これは地方球場好きの私としては新規開拓のチャンスなので、2008年5月18日に出向いてみることにした。

丹波球場の最寄り駅は福知山線の黒井。この駅までのアクセスは京都からならば2パターンある。山陰本線で福知山まで出てそこから福知山線に乗るか、それとも尼崎まで出てそこから福知山線に乗るか。どちらの場合も2時間半以上かかる。

しかも、最寄りと言いながら黒井駅から球場までは10キロも離れているので、歩いて向かうのは現実的ではない。調べてみると、黒井駅から球場付近まで路線バスが出ているという事だったのでそれをアテにすることにした。色々考えた結果、結局山陰本線から福知山経由で黒井駅へ。もしバスに乗れなかった場合はタクシーを使う腹まで括ってから出発。

列車は11時17分、定刻どおり福知山に到着。ここから福知山線に乗り換えて、3つめの黒井駅で下車。駅を出ると、前の道にワゴン車が止まっていた。春日スタジアム行き無料送迎車とのことなので、ありがたく乗せていただく。球場から離れたバス停でおろされる路線バスで行く気になっていたので、これは大助かり。

車中、乗っているのが私一人だけだった事もあり、色々裏話をうかがう事ができた。前日の設営開始時に実行委員長が「明日は清原選手の出場が見込まれるため当初の予想より来場者数が増えると思いますが云々」と述べていて皆さぁエラいこっちゃと思っていたのに、その日の夕方清原が右肘を痛めたという情報が入ってきてがっかりするやらホッとするやらだったそうで。

道が空いていたので10キロの道程もあっという間で球場着。私はここをずっと「丹波球場」だと思っていたのだが、どうやら「春日スタジアム」が正式名だそうで、球場の壁にもそう書いてあった。

まずはチケットを購入。スタンドと芝生席とあったが、記録を取る都合もあったのでスタンド席を選択。ただ、記念になるので切符自体は両方購入。子供は芝生席無料との事。良い事だ。少年野球チームのユニフォームを着た子供たちが芝生席に駆けていくのを見て心和む。あとで彼らが妖怪ボールください小僧に変化してうんざりしたりするのだが。

このとき、今日の試合のパンフレット(両チームの名簿付き)と丹波市立薬草薬樹公園のリーフレットとこの試合の写真コンクールの募集要項と出品票も渡される。こういう試みは面白い。

その後、球場の外周をチェックしてから中へ。到着時点の試合開始1時間前にして既に結構人が入っていたので、まず座席の確保を行うことにした。ここのバックネットは昔ながらの太い柱を使う方式だったので、見やすい席は限られてしまう。案の定何度か移動を繰り返してようやく、なんとか比較的見えやすい場所を確保することができた。

これにて一応観戦する準備はできた。ということで今度は試合が始まる前に買い物をせねばと外へ出た。球場外周の露店には焼きそばやら焼き鳥やら好み焼きやらホットドックやらの定番が並び、その他にカレーを売るワゴン車などもあって大いに目移りする。

しかしその中でも一番惹かれたのは、地元の商工会が出している餅屋だった。店の横で餅つきをしており、そのつき立ての餅をきな粉やあんこで食べられるなど、他の球場ではちょっとない。早速飛びついた。あとはさんざん迷ったが結局カレーと飲み物を購入。狙っていた焼き鳥は残念ながら売り切れていた。

そういえばその昔、地方においてプロ野球開催はお祭りだったと聞くが、この日の光景はまさにそのお祭りそのものだった。球場を抱える丹波市が最寄り駅から無料送迎車を運行し、地元の商工会はいくつもの露店を出し、いくつもの少年野球チームが試合を観戦するべくそこかしこから集まってくる。あげく、地元のスポーツ用品店がユニフォームやグラブの展示までしていた。これは祭りと言うにふさわしい光景だろう。

さて、グラウンドは外野が天然芝、内野が土のいわゆる甲子園型。収容人員はメインスタンド1000人、内外野の芝生席に3200人の計4200人。スコアボードも電光掲示だし、駐車場も広いし、外周には石畳が敷いてあった。

両翼92m、中堅122mとやや小さいが、あとは一軍のグラウンドと比べても遜色ない。グラウンド整備もしっかりなされていたし、地元の熱意が感じられる。駅からの車中、運転されていた方がよその球場と比べて見劣りしないかどうか気にされていたが、これでダメなら戸田やロッテ浦和は立場がない。

あえて挙げるならば、全ての席に日よけになるものが一切ないので日差し対策や雨対策が必要になることと、前述したようにバックネットが昔風の大きな支柱で支える方式なので、スタンド席で観戦すると必ず死角ができてしまうことくらいか。後者は満席近く埋まった時に結構深刻な事態になってしまうかもしれないが、この日の入り程度(6〜7割?)ならばなんとかなった。

どちらも改善するに越した事はないだろうが、市の財政状態がそれを許さないようである。それでも、こんな球場が近くにあったらいいと感じさせられたことは偽りのないところだった。始球式は市の偉い人ではなく、スピードガンコンテストの上位3名が務めたところも好感が持てた。

試合は1-1の8回裏、ソフトバンク先発新垣の失投を相川が逃さずレフトスタンドへ叩き込み、サーパスの勝利。このホームランはグラウンドの広さに関係のない完璧な一打だった。

試合終了後、無料送迎のマイクロバスで黒井駅まで送ってもらう。ホームで列車を待っている時に春日スタジアムの看板を見つけてちょっと嬉しくなった。丹波市ご自慢のこの球場に、来年も来てみたいと思った。

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