山鹿市民球場

(ゲスト寄稿/広島県・いの一番さん)

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山鹿市は熊本県北部に位置し、古くから温泉地として有名な場所である。ここに本格的な野球場である山鹿市民球場が完成したのは1993年、以来この球場はプロ野球二軍戦をはじめ、社会人野球から少年野球に至るまで各種大会に使用されてきた。

しかし、施設のある部分に老朽化が生じたため、2005年から球場の利用を中断してリニューアル工事を実施、2006年9月から再利用が始まった。この工事の内容は地方球場であるためか全国的な話題にはならなかったが、おそらく日本の球場では初めての事例ではないかというものである。

それがどのようなものかというのは後述することにして、本稿では工事の完成を記念して行われたウエスタンリーグのソフトバンク−広島の模様を紹介しながら、球場の概要についてもお伝えしていこう。

2006年9月2日(土)10時07分、筆者はJR鹿児島本線久留米駅に降り立った。今日はここからレンタカーで山鹿市へ向かうという行程である。地図を見ればわかるように山鹿市に鉄道は通っていない。したがって福岡方面から公共交通で行く場合、鹿児島本線の瀬高駅か玉名駅からバス利用ということになる。

しかし、バスの本数は限られており時間的な制約が生じる。また球場は市の中心部から少し離れているので山鹿市へ着いた後もタクシーを使わないといけない。それらを考えていると車の方が楽であるという結論になったのである(もっとも現地へ行くと、市の中心部と球場を結ぶ臨時バスが運行されていた)。

駅構内にあるレンタカーの営業所で車を借り、まずは駅前の大通りをしばらく東進、右折して国道3号線に入る。そしてこの後はひたすらこの国道を南下していくことになる。鹿児島本線は海沿いを走るが、国道3号線は内陸部を走っており山鹿市に通じているのだ。

国道を走り始めると、最初は車線数も多く普通に走ることができたが、久留米市街地を抜けると片側1車線になり、交通量が多いためノロノロ運転が始まった。ようやく渋滞が解消したのは八女市を過ぎたあたりからで、やっと快適なドライブになる。福岡と熊本の県境の峠を越えたのが11時過ぎ、ここは既に山鹿市である。

もっとも、このあたりは合併により市の一部になった旧鹿本町で、球場はまだまだ先だ。さらに車を走らせ山鹿市の市街地が近づいてきたところで、「カルチャースポーツセンター」の看板がある交差点を左折。しばらく走り、やっと目的の球場に到着した。時刻は11時40分、走行距離は45キロである。車を降りると天気は晴れ、残暑が厳しく真夏のような暑さだ。二軍戦観戦をしていると仕方ないとはいえ、うんざりした気分になる。

球場正面へ行き、ネット裏席の入場券(2000円)を買って中へ入る。入場すると早速緑鮮やかな天然芝が目に飛び込んできたが、これこそが最初に書いたリニューアル工事の“正体”だ。

実はこの球場、完成したときのグラウンドは全面人工芝であり、以来その状態で使用されてきた。しかし人工芝の老朽化が進んできたため、天然芝に張り替えることになったのだ。人工芝を剥がし、天然芝の養生に時間を要したことからしばらく利用が出来なかったのである。新聞によると費用は約1億円だったそうだ。

ちなみに野球の本場、アメリカでは人工芝を天然芝に張り替えたケースはいくつかあるそうだ。しかし、日本でこのような話は聞いたことがない。断言できないが初めてではないかと思われる。珍しいことなのだから、地方球場とはいえもっと大きく報じられてもいいような気がするがどうだろうか。

ここで球場の概要を紹介すると、グラウンドは両翼98m、センター122mで内野が土、外野が天然芝である。ブルペンは一、三塁側のファウルグラウンドにそれぞれ2人分が投球できるスペースがある。

次にスタンドは公称16000人の収容能力がある。内野スタンドは一番端まで10列あり、二軍戦クラスの球場としては結構な大きなものだ。座席はネット裏スタンドが背もたれつきの個別席、その他はベンチ席である。

そしてそのスタンドの三塁側には売店用のスペースが設けられていた。地方球場ではあまりお目にかかれないものである。なお外野は芝生席で、スコアボードは得点が磁気反転式、打順表は手書き式である。


スタンド下の売店

このように、まあまあのレベルの球場ではあるが、残念ながら欠点もいくつかある。例えばメインスタンドのイスの背もたれは写真を見ればおわかりのように何とも珍妙なスタイルをしており、しばらく座っていると背中が痛くなってくる。明らかに欠陥品だ。

また、バックスクリーンの塗装は風雨にさらされて結構はげており、内野スタンドのフェンスも色落ちが目立ち見映えが悪い。グラウンドの改修の時に一緒にしておけばよかったのにと思う。また、この球場にはなぜか照明設備がない。草野球ができる程度のものでも設置されていれば、もっと活用されるのではないかと残念である。

やがて試合開始の12時30分が近づき、地方球場恒例のセレモニーが始まった。まず市長のあいさつがあり、次いで両チームの監督への記念品(山鹿灯籠、お米、お茶等)贈呈、熊本県出身の吉本亮選手(ソフトバンク)にも記念品贈呈があり、地元の女子小学生が始球式を行い試合開始である。

この時点でスタンドを見渡すと、内野スタンドはトータルすれば3割から4割程度の入り、外野も十分余裕をもって観戦できるくらいの入りである。主催者としてはもちろんたくさん入った方がいいのだろうが、見る方としてはこのくらいが楽である。

さて、試合はソフトバンクが高橋秀、広島が齊藤の両先発投手で始まった。5回までは1-1の投手戦でいい試合だったが、6回に入ると突然流れが変わった。

まず広島が安打に盗塁を絡め、相手のエラーもあり2点を取ってリードした。しかしその裏、齊藤は疲れのためかコントロールが甘くなり、あっという間に3点を取られて逆転されてしまい、なおも二死満塁のピンチ。ここで金子にレフトオーバーの満塁ホームランが飛び出し、8-3となってしまった。

これで広島の選手は意気消沈してしまったのか7回以降、試合は淡々と進み、8回にも1点を追加したソフトバンクが9-3と勝利した。試合時間は3時間7分だった。

暑い中を観戦したため、体は汗まみれ、しかも山鹿まで来たのなら温泉にでも入りたいところであるが、この日は残念ながら都合で広島へ帰らないといけない。レンタカーの返却期限は18時である。とりあえず、市街地を車で一周して山鹿観光をしたことにして筆者は帰途についた。行きと同じく久留米市内に入ると渋滞になり、駅前に着いたのは17時50分であった。

C 0 0 1 0 0 2 0 0 0   3
H 0 0 0 0 1 7 0 1 X   9

勝:高橋秀 15試合5勝4敗
負:齊藤 10試合4敗
本:金子1号(齊藤)

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